タイトル: 電気系の学生にとっての「環境工学」
ランナー: 会員
山田 貴浩   さん 
    私が所属している福島高専電気工学科では,今年度から4年生を対象とした「環境工学」の授業が約20年ぶりに“復活”しました。私が学生の頃(平成初期)には,5年生後期の半年間に1単位分の授業として「環境工学」があり,当会会長の橋本先生や幹事の引地先生に水環境や大気環境についての講義をしていただいておりました。私の1つ上の学年の皆さんは,当会副会長の原田先生や顧問の伊藤先生に教わっていたようです。平成5年度のカリキュラム改訂によって,電気工学科の授業から「環境工学」は無くなってしまったのですが,平成21年度入学生のカリキュラムから再び「環境工学」が組み込まれることになりました。すでに授業は始まっていて,私は最初の2回を担当し,環境工学の導入部分の講義をしました。受講している学生の状況は良好で,興味を持って話を聞いてくれている学生が多いです。
    電気工学科の学生が「環境工学」について学ぶ意義は多いと思います。まず,私自身もそうだったのですが,視野が広がります。高専の電気工学科では,電気の専門についての授業はいくつも受講するのですが,化学や土木に関する専門的なことを学ぶ機会というのは殆どありませんでした。どうしても自分の専門に凝り固まった頭になってしまいがちです。そのため,他分野の専門に関する授業は新鮮な気持ちで受けることができたことを記憶しています(そして,環境に対する関心が高まり,大学院での研究を経て,現在では当会の事務局を担当している次第です)。また,電気系の企業であっても,工場から排出される物質が周辺の大気や水に影響を及ぼすことを配慮した経営がなされています。実際に発電所や工場へ見学に行くと,周辺の環境を汚さないための装置を拝見することが多くあります。本校を卒業して企業へ就職した後,環境に配慮のできるエンジニアになってもらうために,大気環境や水環境の基礎的な知識を習得することは必要なことであると考えます。そして,現在の福島の状況を考えると,放射性物質に対する正しい知識を得ておくことも大切です。空間放射線量や放射線濃度の計測方法や放射性廃棄物の処理についての知識や技術は,これから福島で暮らしてゆくために,役に立つものになると思います。
    一方,電気工学科では,種々のセンサを用いて物理量の測定や信号の処理をするシステムを構築するような「モノづくり」に関する授業も展開されています。そこで習得する技術を,環境に関する情報の測定・処理ができるシステムの開発に応用できると良いと思います。そのためには,ターゲットとなる環境についての知識を得ておく必要があります。対象とする環境の規模も,地球規模のものなのか,それとも地域特有の環境なのかによって,使用するセンサや開発するシステムも変わってきます。したがって,地球環境の現状や問題点のほか,当会の名称にも入っている「地域環境」についての学習も必要となります。
    さらに,我々の生活に電気は必要不可欠なものとなっていますが,発電方法についての見直しが進む中,エネルギーの面からみた環境についての知見も必要とされます。この点については,昨年度から「環境・エネルギー工学概論」という授業が「環境工学」とは別に開講されていますので,そちらに委ねることになります。
    こうして考えてみますと,電気系の学生にとって「環境工学」という授業を行う必要性 は極めて高いものであることが分かります。せっかく約20年ぶりに復活したのですから, 今後も継続して開講されるように,そして学生の将来にとって役に立つ知識や技術を教え てゆけるよう,授業を担当する我々教員も研鑽に励む必要があることを痛感しています。