タイトル: 食糧問題は環境問題?
ランナー: 会員  匿名希望 Y.A. さん


  今日の環境問題の主な話題は、従来の公害問題のような地域限定のものから、地球温暖化などのように地球規模のものに変遷しています。今日的環境問題である地球規模の環境問題の基盤は、「持続可能な開発」で一貫しているように思います。急激な気候変動により社会が持続性を失うかもしれないから、地球温暖化の原因に目を向けよというものだし、人間の生存基盤である自然を維持するためには、生物多様性が大事ということになります。ここで重要なのは、地球温暖化や生物多様性はあくまで「社会の持続可能性」という大前提の中から派生した個別の話題であるということです。大前提である「持続可能な開発」とか「社会の持続可能性」という主題に目を向けないと、過ちを犯している可能性があります。
  その事例の一つが、食糧問題です。
  近年、地球温暖化の防止という理由で、貴重な食糧資源を石油代替化する取組みが進んでいます。これは、「持続可能な開発」とか「人間の生存基盤」という大前提を無視した考えです。
  メキシコで、主食であるトルティーヤの値上げに抗議する大規模なデモが起きたことは記憶に新しいはずです。トルティーヤとはとうもろこしの一種ですが、その価格が上がったのは、原油価格の高騰により代替燃料であるバイオ燃料の需要が増し、とうもろこし等穀物のバイオ燃料原料としての需要が増加したため、市場メカニズムが働き、穀物の価格が上がったことが一因といわれています。穀物価格の高騰は、「経済力の強いところに多くの穀物が流れ、メキシコなどの経済力の弱いところへの流れを鈍くする傾向」を、より顕著にするかもしれません。世界には貧困にあえぎ、餓死する人々が多数存在することを考えると、遺憾なことです。地球温暖化問題を解決する一方で、貧困者が犠牲になるとすれば、本末転倒ではないでしょうか。
  食糧自給率の低い、我々にも他人事ではありません。日本の食糧自給率は先進国の中で最低であり、大部分を海外に頼っています。最近カップラーメン等、食品価格が一斉に値上げされるとの報道が目立ちますが、これも、やはり原油価格高騰に伴う代替燃料原料である穀物価格の高騰を受けて、カップラーメン等の製造原価が高くなったことが一因と聞いています。日本でメキシコのようにデモが起きないのは、経済力が依然として強いからです。中国、インドを凌駕する経済力を持ち続ければ、日本社会は磐石でしょうが・・。足元の幸福のために、将来にわたる「社会の持続可能性」を失うかもしれないことを軽視しているのであれば、日本社会の持続可能性に不安を覚えます。
  「社会の持続可能性」の理念を念頭に置けば、このような「地球温暖化防止のために穀物を代替燃料化」という発想は起こらなかったはずです。
社会に解決策を提示するのが本会の目的の一つだと思いますが、国際社会においては「穀物の食糧外利用の規制」や「技術開発」が必要であると考えます。我が国内においても、稲わらなど、未利用バイオマスの利用可能性の検討は、急務です。
  地域としても、国際社会の一員として、「社会の持続可能性」を念頭に置く人材育成が必要ではないかと思います。「社会の持続可能性」と言っても、「食べ物を粗末にしない」という当たり前の倫理観が求められているのです。さらには、我が国が飽食を謳歌しているのは、海外に支えられてのことだという意識の醸成も重要です。
  「社会の持続可能性を維持するには、日本は内外に向けてこれから何をしていけばいいのか。」将来の見通しが悪い今、エンジニアや経済人、そして、消費者として、真剣に考えることが求められているのではないでしょうか。