タイトル: 最近のマイワシ事情
ランナー: 福島県水産試験場 平川 英人


 5月25日の新聞によると、築地魚市場で、マイワシのキログラムあたり単価は、5775円を、1尾あたりでは1155円で取引された。
昭和50年代半ばに、いわき市でも小名浜中心地の至る所で、トラックがイワシを落としていて、それを車が踏みつぶして辺りが血で赤く染まるという、公害を引き起こしていた。この頃の値段がキログラムあたり10円台であったので、イワシも随分出世したものである。
  いわき市での平成17年の漁獲量はわずかに9トンである。最も漁獲された昭和56年の19万トンと比べると、2万分の1まで減少した。
  我が国では、昭和63年に漁獲量が450万トンを史上最高を記録した。
  その年は産卵量が多く、稚魚も多かったのであるが、1歳魚としての生き残りが極端に少なくなった。次の平成元年にも同じように産卵は多いが、1歳魚の生き残りが少なくなって、イワシ資源は急激に減少した。
  平成17年の漁獲量には数万トンとなった。
 太平洋にいるマイワシの生活について少しふれてみよう。
  生息水温は主に10〜20℃で、最適水温は15℃である。この水温を追って大回遊する。産卵盛期は2〜3月である。産卵場は土佐湾に中心があり一部伊豆半島沖にもある。産卵場を起点として春から夏にかけては索餌しながら北上する。
  資源が多いときには釧路沖まで漁獲されたが、最近のように少なくなると八戸沖が北の限界である。秋になって水温の低下とともに南下して、再び産卵場に向かう。北上期は比較的沖合域を回遊するため漁獲されにくいが、南下期には比較的沿岸域を回遊するために漁獲されやすい。
  いわきの沖では12月〜2月にかけて南下群を主体に、まき網で漁獲される。
 イワシの料理法はいろいろあるがあるが、鮮度の良いものは刺身でおいしく、”イワシ七度洗えば鯛の味”といわれている。一塩にして乾したイワシを焼いて食べるのが一般的である。もちろん煮魚もおいしい。
  栄養価が高く最近では頭がよくなるDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれていることも明らかにになった。
 大昔より食べられていたことは貝塚から骨が発掘されることから推測されるが、下魚として取り扱われてきた。
  「源氏物語」の作者として名高い紫式部もイワシ大好き人間であった。あるとき、イワシを食べているところを夫にみられ、イワシのような下魚を食べることをたしなまれたところ、「日の本にはやらせ給ふ石清水詣らぬ人はあらじとおもふ」と詠んだという。もちろん当時多くの人が参拝した石清水八幡宮とイワシとをかけてどちらもまいらぬ人はいないといった意味である。それほど美味しい魚であることが平安の昔より評判であった。
  希少価値が出て、高級魚として取り扱われると、一段とおいしさが増すから、人間の舌も不思議である。
  このように極端に減少したマイワシであるが、数十年の大変動をする魚であるので、再び復活することが十分期待される。当会秋元副会長の恩師が昭和40年代イワシの不漁時期に、昭和40年代終盤から増加期に入ると、予測してそのとおりになった。
  現在の不漁期も早晩脱して増加に転じることになるが、県内一のいわし水揚港である小名浜魚市場の復活のためにも、その時が1日でも早くあってほしい。