タイトル: 聞いてみよう!!やってみよう!!『雨水利用』
ランナー: いわき市下水道部下水道建設課 柳澤 潤


はじめに
 いわき市では、新・いわき市総合計画「ふるさと・いわき21プラン」改訂基本計画において、まちづくりの展開として「健全な水循環系の確立」が位置付けられ、平成19年度より「宅地内雨水流出抑制施設設置補助事業」がスタートする予定となっています。
 この基本計画は、基本構想に掲げたまちづくりの理念や方向性を具体化し、いわき市がめざしていく姿を現実にするための基本的な施策を総合的、体系的に定めたもので、昨今のいわき市を取り巻く様々な環境変化や、市民ニーズの動向に的確かつ速やかに対応した内容となっています。

村瀬誠氏との出会い
 市の下水道建設課に勤務する私は、先に述べた「宅地内雨水流出抑制施設設置補助事業」の業務担当となったため、先進自治体の事業内容調査をしていました。そこで東京都墨田区の事例を調査することになり、環境保全課勤務の村瀬誠氏と出会うことができました。村瀬氏は、墨田区環境保全課の現役係長で「ドクトル雨水」(薬学博士)として海外でも有名な人物で、両国国技館への雨水利用導入を皮切りに、日本は元より世界各地に雨水利用を広めてきた雨水利用界の第一人者です。その村瀬氏が初対面の私に会うなりこう言いました。「水問題を解決するキーワードは「雨水」である。」この村瀬氏の発した一言は、静かながら、ものすごい情熱を感じました。そしていわきでも「雨水の有効利用」を広げなくては、という力強いパワーをもらってきました。

いわき市民の“雨水”への意識
 2006年1月に福島高専の学生と街頭で、「雨水の有効利用に関するアンケート」を行いました。このアンケート調査は市民の皆様が今現在、どのぐらいの雨水に対する興味や知識があるのかを調査し、今後の施策に反映させるのが目的で行いました。平成19年度よりスタート予定の「宅地内雨水流出抑制施設設置補助事業」は一般の家庭向けの雨水有効利用施設設置の補助メニューで、雨水タンクの購入や公共下水道接続に伴う浄化槽の雨水タンクへの転用、雨水浸透ますの設置に対して補助をしていくという内容となっています。しかしながら、その施策の内容やメリット、コストの問題など、利用していただく市民の皆様によく理解をいただかないと、全市的な普及はしないですし、施策を実施する効果も少なくなってしまいますので、現状の把握と今後の対策を講じなければならなかったのです。


 アンケート実施日は、あいにくの天候でしたが、二日間で約500人の方々に協力をいただくことができました。「雨水を有効利用することに対する興味」については、約8割の人が非常にある・少しはあると答え、関心の高さが伺えました。また、「貯留した雨水の用途として希望する利用方法」という問いに対する答えでは、「庭への散水」「洗車」「水洗便所用水」「防火用水」などに高い関心が集まりました。


市内での実践例
 いわき市内で雨水のタンクを自宅に設置している方、浄化槽の転用をしている方、雨水浸透ますを設置している方など、雨水の有効利用を既に行っている人は私の知る限りでも十数名はいます。また、新たにそれらの施設を設置しなくても、自宅の庭にバケツなどを置いておき、自然に雨を貯めて、散水に利用している方は相当数おられるのではないでしょうか。その中でも、雨水タンクを設置する方は、最近多く見られます。バケツなどで水を貯めておくと、どうしても夏場の暑い時期はボウフラが湧いたり衛生上、問題がでてきます。雨水タンクは密閉されていますし、最近はデザイン性の高い商品も多く販売されることから設置しやすくなってきたと考えられます。また設置方法も簡単で、雨樋を糸鋸で切断して、雨水を分けるだけなので、日曜大工のレベルでできます。
平地区の一般住宅
 自宅の新築の際に、雨水タンク(200リットル)を設置した。主に側溝等の清掃に使用しているという。また庭には、雨水浸透ますを設置しており、家主さんの雨水の有効利用への意識の高さを感じる。
平地区の集合住宅
 マンションの敷地の一角に(1トン)の雨水タンクを設置した。主にゴミ集積所の洗浄に使用しているという。またベランダでのガーデニングへの散水に使用している人もおり、有効利用が図られている。


他市の実践例

郡山市

  郡山市では、平成8年度から雨水利用に係る施策を実施しています。ただし、いわき市で考えている目的とは少し違う背景が郡山市にはあります。皆様御存知のとおり、郡山には、一級河川阿武隈川が流れ、過去にたびたび甚大な水害を引き起こしてきました。河川が氾濫し、家屋が浸水。これらを未然に防ぐために、河川の改修は元より、河川への流出量の削減という観点で様々な施策が執られてきました。その一つが宅内での雨水貯留なのです。浸水被害の軽減を図るために、公共下水道に接続後不要となった浄化槽を活用し、雨水の流出抑制を図るというもので、施策の目的の第一意義は浸水防除なのです。しかし、当然付加価値として、水資源としての雨水の有効利用を図れることは勿論、不要浄化槽の産業廃棄物削減、下水道の水洗化率の向上などのメリットのあり、多くの市民の方々から支持されており、これまで1000件を超える実施実績となっています。
浄化槽の雨水タンクへの転用
 公共下水道の接続によって、不要となった浄化槽を雨水タンクへ転用して、3年が経過しましたが、問題もなく、ノーメンテナンスで写真のように底版が見えるほどクリアーな水質となっています。

東京都小金井市
  小金井市は、東京都のほぼ中央に位置し、都心の東京駅から西へ約25kmに位置しています。「黄金に値する豊富な水が出る」ことから黄金井(こがねい)→小金井との由来があるそうで、玉川上水や野川など親水の場が市内各所にある自然豊かな地勢です。しかし、近年は公共下水道が整備され、河川への維持流量が少なくなったほか、急速な都市化で農地の宅地化、道路の舗装などで雨水の地下浸透率が年々低下し、地下水及び湧き水の減少、樹木の育成阻害などの見られるようになりました。そこで、対策として、公共事業による治水対策と併せて地下水の涵養、湧き水の復活などを図るため、「雨水浸透施設等設置事業」に取り組みました。昭和63年から平成17年までの間に雨水浸透ます約49,000個、浸透管約38,000mの実績となり、新築家屋の99.9%はすべて雨水浸透ますを設置するなど行政と市民が連携して施策に取り組んでいます。
雨水浸透ますの断面模型
 小金井市役所の玄関ホールに展示してある雨水浸透ますの断面模型。通常は見えにくい、地下における水の流れがわかりやすく見れる。このほか、市役所駐車場にも実際に雨水浸透ますが設置してある。


香川県高松市
  高松市の年間降雨量は全国でも、著しく少なく、夏場には四国のダムの貯水量がニュースになるほど、水不足に悩まされている地勢となっています。市内にはため池なども多く存在し、雨水の有効利用については、昔から様々な取り組みが行われてきました。高松市では、雨水の貯留施設に対する補助制度も充実しており、条件によっては最大で250万円まで助成されます。また、下水道の処理場から排出される処理水も再生水として、市内各所に供給しているなど、「水」に対する多くの施策を実施しています。
雨水タンクの設置
 高松市役所玄関前にある雨水タンク。実際に植木への散水に使われている他、雨水の有効利用をPRするモニュメントの意味も兼ねて、玄関前に設置してある。
 また、節水コマ(蛇口からの水量を細くするもの)が無料で配られているなど、全市的に水問題について取り組まれている。


今後の展望
 まず、「論ずることより、行動すること」こそが、雨水の有効利用をいわきで普及させていくために必要なことなのではないでしょうか。雨水の有効利用は、効果が分かりやすく、誰でも簡単にできます。だからこそ、一人一人が「雨水がもったいない」「雨水を貯めよう・・・そして使おう」と思い、実行することこそが大切なのではないでしょうか。市民アンケートで約8割の人が興味を持っている。ということがわかりましたが、その人達に実際に雨水利用をやってもらうにはどうしたらよいのか・・・やる気さえあればバケツを庭に置いておいて、溜まったら有効に使う。だからこそ、いわき市民の心に雨水利用に対する感性を育むことが大切であるし、その作業をこれからみんなで力を合わせてやっていかなければなりません。