タイトル:   高校理科研修会事情  
ランナー: 吉田真弓 (湯本高校勤務)


    今回のリレーエッセイでは、教員の研修会ってどんなことをやっているのかご紹介いたします。普段あまり教員の研修など興味がない方もちょっと覗いてみてください。案外面白い話題も見つかるかもしれませんよ。

    今回ご紹介するのは、9月に行われた2005年度の高校理科教育研究会の一部です。

    会場は郡山のビッグパレットで、環境フォーラムと冒険家関野吉晴さんの講演会が行われました。
    環境フォーラムでは「野生動物の交通事故」と題した発表がありました。高校の生物担当の教員が、通勤の途中で見かける交通事故にあった動物の死体を動物の種類別、月別にデータをとり、その背景にある野生動物の生育環境悪化に問題を提起したものでした。ネコ、イヌなどの人間に飼われていた動物から、タヌキ、キツネ、イタチ、ハクビシン、ニホンザル、ムササビ、ヘビなど様々な種類の動物が交通事故の被害にあっているようです。
    今、いわきでは国道289号線の田人地区で、動物たちの事故死を防ぐためのエコロードなる取り組みがなされています。エコロードとはエコ(=環境)とロード(=道路)を組み合わせた造語で、動物に配慮した道路ということです。このような道路作りが行われるようになったのは、私たちが、日常的に見られる動物の交通事故死に対して問題意識を持っているからだと思います。今回のような地道な研究を継続していくことが、エコロード作りを全国に広げる地盤になると思いました。
    (でも、熱心に取り組みすぎて、タヌキの死体を車に乗せてはダメだよ。ダニが大喜びで、人間に寄生しようと狙われるよ。大変なことになるよ。と研究発表をされた方がおっしゃっていました。)

  冒険家関野吉晴さんの講演は、昨年の研修会からの続きで、500万年前、初の人類が誕生し、その後世界中に広がっていった人類の長い旅「グレートジャーニー」についてでした。関野さんは、数多くの著書もある多彩な方で、一橋大卒業後、冒険家生活を続ける中で、いわゆる未開の地で医師の必要性を実感し、横浜市立大に入学し、医師となった経歴をもっています。冒険家生活を通して、常に環境と共存する人々を追い続け、一緒に生活して、生活の豊かさとは物質の豊かさに比例するものではないということを私たちに伝えてくれている方です。
    私たちの生活の基準から見れば、決して豊かとは思えない暮らしぶりのアマゾン流域の人々が、イヌイットの人々が、満面の笑みを湛えて生活しているのを見ると、人間の生活は、環境からの恵みがあれば十分だということが伝わってきます。この笑顔は、文明にどっぷりと浸かった私たちの生活に警告を与えてくれている気がします。
    地球の環境をこれ以上悪化させないために、人類はもう一度「グレートジャーニー」をしていかなければならないのではないでしょうか。

    (昨年度「グレートジャーニー」が終わり切らず、今年度も引き続き講演をお願いした関野さんですが、今年度も「グレートジャーニー」は終わりませんでした。これは来年度もお願いすることになりそう?)なお、関野さんの講演会は、誰でも入場できるようになっていましたのでファンの方は来年に期待して下さい。

    ここから先は、教員以外はあまり興味を感じないかも。でも、教員研修の一番重要な部分(授業力の向上)なので紹介したいと思います。


公開授業の参観

  高校の理科は、科目に分かれているので、私は、物理・化学・生物の3つの授業を見てきました。どの授業も生徒のみなさんがすばらしかったと思います。

  まずは「生物」。
    花粉管の伸長を調べるという実験でした。この実験は伸長速度の速いインパチェンスの花粉を寒天(この寒天は、めしべの柱頭に似た環境にするため少し砂糖を加えてある)の上にパラパラッとまき、顕微鏡で花粉を観察していると、数分後に花粉管がどんどん伸びていく様子が見えるというものです。花粉管の中には精細胞が入っていて、卵細胞までたどり着いて受精するため、花粉はひたすら花粉管をのばし続けます。このスピードを計算すると思った以上に速いんです。


実験の様子 花粉管の伸びたところ

    「化学」の授業は、有機化合物の分子モデルをつくるところでした。
    有機というと亀の甲、ざわざわっと鳥肌が立つ辛い思い出の方も多いかも。でも、有機化合物の構造式をこのようにモデルをつくりながら理解すれば、面白いし覚えやすいだろうなぁ、化学は面白いって実感できる授業でした。よく見ていると、指示が出る前に次の構造をつくっている生徒さんもいて、興味のある子はどんどん自分で考えながら進めることができるのだと思いました。

ブタンの構造式 分子モデル

    最後は「物理」。
    3年生の物理選択者なので、みなさん息がぴったりという感じでした。コンデンサの充電と放電の実験でしたが、モデルの回路を見ながら自分たちの回路をつなぎ、計測し、データをとり、結果のグラフ化まで、自分たちで協力して班毎に進められるのは、普段から実験に慣れているからだと思いました。

実験についての説明 実験の様子

    また、物理教室の前には、物理の話題が沢山提供されていたのにも驚きました。
    こんな楽しい物理ならもっと深く勉強してみたくなると思います。難しい法則や理屈も大切だけど、やっぱり日常の環境が整っていると子供達は刺激を受けて、勉強が好きになるのだというのが3つの授業を参観した感想です。

物理教室前の掲示板