タイトル:   自然環境の保全と観光産業の両立への道は  
ランナー: 引地 宏


   自然の生態系と景観に恵まれている地域や世界自然遺産に指定された地域には、多くの観光客が自然に触れ新鮮な空気を吸い、精神面と体力を回復させ生活に潤いをもたせるために訪れることが多くなっています。

   それによって、観光ビジネスを活性化させ観光産業は進展しますが、観光客による容器包装・残食品等の廃棄物や水質の汚濁が問題となり、自然環境を保全することが困難になります。また、ボランテアによる事業だけでは環境保全が困難な作業も多く、経費が高額となり公的な資金だけでは解決されにくくなっています。

   そこで、数十年前から世界自然遺産地に指定されているカナダのナイアガラ滝、アメリカ合衆国のグランドキャニオンとヨセミテの自然環境の保全と観光事業を見学してきました。


   ナイアガラの滝では、河川の中央がカナダとアメリカ合衆国の国境となり、観光事業としてアメリカ側は滝の裏側の生態系と船上からの滝の景観を見学する事業を行い、カナダ側は船上からの景観と滝の下で観賞する事業を行っています。

   滝と河川の保全の経費は、アメリカ側は車両の入場料を徴収し、カナダ側は消費税(15%)の半分を当てています。滝と河川を保全するには、水量が季節で大きく異なり流木や土石の除去と生活系排水による水質の汚濁が問題となり、さらに浄化施設を建設して河川に放流しています。

   また、観光客が集中せず分散するように、展望台の設置・近郊の公園緑地化と河川の魚類・沿岸の植生の観覧室の管理も大切になります。

   さらに、たばこの吸殻・残食品等のポイ捨ての監視と指導を行う清掃員もいます。そこで、「環境保全の経費を捻出するためには、公的資金と観光事業者の資出金の他に、観光客からも環境保全に協力して戴くことが大切になり、消費税に加算している」と説明を受けました。

   次の世界自然遺産地であるグランドキャニオンでは、軽飛行機で上空から全景を観賞し、空港地で観光バスに乗り換え公園のゲートで入場料金を払うことになっていました。直接、自家用車で来ても、入場料金を払います。園内の主道路は二車線の舗装道路で予想外でありました。

   管理者に聞くと、「ここはグランドキャニオンのビレッジで、赤茶色と黄色の岩肌を観賞するための観光用展望台地とロッジ・レストランを建設し、入山できない自然の山並を保全している」との説明でした。

   また、「高度2,500m 級の台地では温度差が大きいため道路の両側の樹木と野草の保全が困難になるため、展望台地を多くして観光客の分散をはかり、無料のシャトルバス(近距離往復バス)の利用で管理し易くするとともに、野生の動物を保護するために野外での飲食を禁止している。」とのことでした。その効果でゴミ一つ落ちてないことに感動しました。

   環境保全の管理経費は車両の入場料金と公的資金で運営しているとのことです。最後に、ヨセミテの世界自然遺産地でも車両の入場料金を徴収し、自転車や徒歩での入場は無料となります。

   自動車の排気ガスによる影響を少なくするため、山の岩肌と滝の景観を各所から見られるように舗装道路を建設し、自然度の高い生態系の地域にはシャトルバスと障害者用自動車を利用するか、自転車や徒歩で観賞するようにしているようです。

   滝や河川の水量は春の雪解け期に多く、沿岸が削られ貴重な樹木や野草の管理と容器包装・残食品等のポイ捨ての監視にも重視しているとのことでした。

   ここでも、自然環境の保全経費には公的資金と車両の入場料金で運営しておりますが広域のため、観光客の少ない地域には手が回らないそうです。


アメリガ側のナイアガラの滝
(洪水時の土石が堆積している)

カナダ側のナイアガラの滝

グランドキャニオンの岩縁

ヨセミテ・ミラー湖への散歩道

   以上、カナダとアメリカ合衆国の世界自然遺産の保全と観光産業の両立を見学してきましたが、保全事業と人件費で苦労しているようです。

   日本でも、各地の自然環境に恵まれている観光地や世界自然遺産に指定された地域に出かける人々が多くなります。そのため、今後ますます環境保全が大変になると思われますので、できるだけ早く手を打つことが大切になります。