タイトル:   春に想う  
ランナー: 冨田 明雄



 春は最も季節の変化を感じる時期である。冬の間じっと灰色に耐えていた木々の先が紅色づきはじめ、やがてピンクや薄黄や淡緑色のパステルカラーヘと変わっていく。同時に桜があちこちで開花し山は装いの季節へと入っていく。
桜の木を意識できるのもこの季節である。山々を眺めると意外に桜の木が多いのに気がつく。夏の葉が生い茂っているときには分からないが、桜の時期になると、いわきにはこんなに桜の木が多かったのかと嬉しさで一杯になる。桜も早く咲くものから遅く咲くものまであり春山の美しさは日々新たな驚きで満ちていく。
  山々は里の方から上の方へ萌葱色が広がっていき同時に下の方から濃い緑色に変わってゆく。このグラデーションは日一日としかも確実に行われついには夏山の濃い緑一色となる。この時期新緑の雑木林は花々との競演でもっとも美しく映え、一幅の日本画になる。この美しい風景は雑木林があればこそであり、日本の原風景は各種各様の植物が織りなす美しさにあるといえよう。日本の美を象徴するこの美しい雑木林の風景をいつまでも残しておきたいものである。
   近年雑木林を伐採しては杉や桧の植林を行うのがあまりにも多い。また手入れが行き届かないために山の荒廃は目に余るものがある。一歩杉林にはいると間伐をしていないために林内は薄暗い状態である。このような野放しの杉林は身辺至る所にある。
逆にあまり例はないが手入れの行き届いた杉林は、林床に他の低木層も育ち健康そのものである。林を生かすも殺すも人の手にかかっている。手入れの悪い杉山は杉の根が十分にはっていないので大雨などが降ると土砂崩れが起きやすい。反面雑木林は根が地面に入り込み崩れにくいという。河川の上流や川沿いの植林は保水力を保つためにも雑木林が望ましい。自然の植生のままの森林はとても美しく、森林本来の機能を果たしている。自然保護の観点からも今後はその地域に自生する樹木を主にした森林造りを推進すべきであろう。
  近年、山・川・海の一貫した環境作りが叫ばれている。山に木を植えて保水力を高め豊かな水を確保すると共に、栄養分のある水を海に届けることにより海草などを増やし魚類も繁栄させる仕組みである。山をつくる、川の自浄作用をまして水質を改善させ海に届ける、この一連の流れを構築させようと努力している団体が増えてきている。山には針葉樹林ぱかりでなく広葉樹林も増やしてゆく、川には構築物ばかりでなく自然の流れが出来るような流路を復活させる、海には人工工作物を少なくし海本来の自浄作用を増すようにする等これまで人間が自然を改変してきたことに対し、なるべく自然の姿に戻してやるのが良い環境を作る一手段である。人間はあまりにも自然を改変しすぎてきた。この辺で自然のなすがままの姿で推移させるのが自然環境の保全につながるのではないだろうか。