タイトル:   物質循環  
ランナー: 青木 寿博



 1,2ヶ月前に113番目の元素を日本人が発見(というか合成)したことがニュースになりました.昔も今も天然に存在する元素の数(92)は変わらないはずですが,人工的につくられる物質(化合物)の種類は,急激に増えているようです(研究用も含めれば,1日当り約 4000種類).

元素に対する考え方の歴史を調べてみると古代中国では,五行説という仮説があり,元素の種類は,5種類と考えられていたようです.
さらに,「"木"は"火"を生じ,"火"は"土"を生じ,"土"は"金"を生じ,"金"は"水"を生じ,"水"は"木"を生ず.」 と言われるように元素の生成過程には互いに依存関係がありました.
しかも元素それぞれの存在量とともに変化が起こる頻度のバランスも重視していたようです.この考え方は医学や易学へも応用されたようです(ちょっと強引にも見えますが).
"火"の中に熱や光もに含まれているから,物質・エネルギーの量的存在バランスを重視した考え方であると解釈するこもできます.現代の科学の立場から見れば,このような考え方には間違いが含まれているのだろうけれども,物質循環という見方をするとなかなかうまくできていうなぁと感心させられます.
もっともこのように考えていたのは一部の哲学者だけなのだろうけれど.

一方,同時期のギリシャには,4元素説と原子仮説があり,原子仮説の方はしばらくの間,忘れられていたようです.4元素説では,元素(水,気,土,火)それぞれは,天上界の第5元素(エーテル)に冷,熱,湿,乾の性質のいずれか2つの性質が加わることにより生じ,根源物質を介して相互に変換し得ると考えられていました.あらゆる物質が相互変換可能という点では,五行説のようなバランス感覚はなかったのかも知れません.それゆえ,後に錬金術が盛んになり,その結果,4元素説が否定され,原子仮説が復権し現在の化学へと発展したように見えます.
バランス感覚の欠如がここ2〜3百年の科学の発達,人工増加,環境問題へと発展しているのかも知れません(無理がある?).

古代中国をはじめ東洋の考え方には,確かに非科学的な要素を多く含みますが,時間,空間を考慮しての全体の調和,バランスを重視すると言う意味では,優れた考え方なのではないだろうか.
逆に,細分化された個々の分野の理論・考え方では,まだ解明されていない現象は多いにしても現代科学の方が勝っているに違いない.

現在では,2千万種類以上の物質が知られており,数万種類の化学物質が生産されているそうです.1000年前はどうか知りませんが,とにかく現在流通している化学物質の種類は必要以上に多すぎます.その分生活は便利なんだろうけど.自由競争もいいけれど,少しは自粛しないと.4つや5つにまで絞らなくともいいが,古代のように(現在の意味での)元素ではなく,天然に存在する物質(水,空気,...)
を元素(基本物質)として,太陽エネルギーさえあれば循環・再利用可能な現代版の五行説をつくれないものだろうか.


次回のランナーは、秋元義正 さんです。